男の人は、皆、双眼鏡を持っている
2017-06-22


久しぶりに息子が電話をくれた。

ランチをした後、義姉の家を二人で訪ねてみた。
義姉は、とても元気。
(S姉、ケアマネさんの話でも、最近、とても元気とのこと。)
息子にも、
「久しぶりやね〜」と喜んでくれる。

息子は、彼女の状態を私から聞いているので、
なんとか、思い出し作業をしてもらおうと、
彼女の姪や甥の名前を、自分も忘れたふりをして尋ねていた。
が、出てこない。
と言うより、
「忘れたわ」と、あっさり、話題から外す。
この元気さ、明るさは、ひょっとして、
自分の記憶力の衰えを、もう直視しなくなったせいかもしれない。
少し前は、記憶力の衰えを悲しみ、不安がっていた。
なんだか、それがつきぬけちゃった、というように見える。
不安や悲しみを感じるのは、まだ、事態を把握しようという意欲があったせいなのではないか。

しかし、息子はその元気な義姉しか見ていないので、
たぶん、事態の深刻さには気づかないだろう。
と言うか、こいつは(あ、もとい! この子は)、いつも、
大変な最中にはいなくて、一段落したような良い状況に居合わせることが多い。
ちょっとむかつく。

半分下りていたベランダのブラインドを息子が上げるので、
義姉は、
「向かいのビルから見られるかも」と言う。
確かに、だいぶん離れてはいるが、ビルの窓が並んでいる。
義姉曰く、
「ほら、男の人って、みんな双眼鏡を持ってるでしょ?」
「みんな?」息子が聞き返す。
「そう、みんな双眼鏡を持ってるやん。それで見てたりするねん」と、真顔で、何度も言う。

「男の人は、皆、双眼鏡を持っている」というのは、
私も何度も聞いた。
息子は、
「みんな持ってるの?」と、大ウケ。

結局、明るい義姉と、
とても機嫌よくさよならをして辞去した。
彼女の家の近くに、おいしいと評判のパン屋さんがあって、
おみやげに買って行ったが、
たぶん、食べるのを忘れたまま、どこかにいってしまっただろうなと、
ちょっと後悔している。
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